タイトル
「渾身 KONーSHIN」
プロローグ
島根県、隠岐諸島で育った多美子は英明と結婚。
英明にとっては2度目の結婚で、
病死した英明の先妻で多美子の親友だった
麻里との間に生まれた5歳の娘 琴世とともに
暮らしていました。
傍目にも微笑ましいほど多美子になつきながらも
琴世は、まだ多美子を
「お母ちゃん」とは呼べずにいました。
かつて、麻里との結婚を選んだ英明は
駆け落ち同然で結婚。
島での評判は良くはなく
以来、両親に娘を会わせることさえできていません。
それでも島が大好きだからと、苦労を覚悟の上で
英明と麻里は、島での暮らしを選んだのでした。
そんな中、20年に一度の
水若酢(みずわかす)神社の遷宮(せんぐう)を祝う
古典相撲大会の日。
島で生まれ育った多美子にとって
古典相撲はもちろん大切な伝統行事ですが
この日の大会は、それ以上に特別な意味をもっていました。
夜を徹して、島中の人が見守る中で行われる
300番にも及ぶ取り組みの最後に
英明が地区の名誉や、家族の思いを背負って
土俵に上がるのです。