タイトル
「はじまりのみち」
プロローグ
映画界に、政府から戦意高揚の国策映画作りが要求された時代。
若き木下惠介が監督した映画『陸軍』は
「その役割を果たしていない」と政府から睨まれ
次回作の製作を中止にさせられてしまいます。
希望を失った惠介は、会社を辞め
病気で倒れた母・たまが療養する浜松の実家へ向かいます。
そんな中、1945年夏。
戦局は悪化の一途をたどり、浜松も安心の地ではなくなり
惠介は、一台のリアカーに身体の不自由な母を乗せ
兄と、頼んだ便利屋の三人で
60キロ先の疎開先へ、山越えすることを決めます。
17時間歩きとおし、激しい雨の中リアカーを引く三人。
ようやく見つけた宿で、惠介は母の顔の泥を優しくぬぐうのでした。
疎開先に落ち着いて数日後
たまは不自由な身体で、惠介に手紙を書きます。
そこには、たどたどしい字である言葉が書かれていました。