タイトル
「大統領の料理人」
プロローグ
ある日、フランスの田舎で
こじんまりとしたレストランを経営する、オルタンスのもとに
フランス政府の公用車がやって来ます。
彼女が連れていかれたのは、パリ中心部にある
エリゼ宮殿と呼ばれる、大統領官邸でした。
農家のストーブの前から、宮殿に招かれたオルタンシアの姿は
まるで“シンデレラ”のようでした。
招かれた理由は、フランソワ・ミッテラン大統領からの
直々の指名でプライベートシェフに任命されたというもの。
しかし、官邸は独特の礼儀や規律の世界。
厨房も“料理を美味しく作る”ことを二の次にした
細かい約束事で、縛られていました。
これまで、女性料理人がいなかった男社会の厨房では
オルタンスは完全に“招かれざる客”状態。
それでもオルタンスは、料理のこと以外は目もくれず
彼らの嫉妬などに構わず、美味しい料理をつくることに
真摯に、豪快に、突き進んでいきます。
やがて、彼女に超えをかけてきたミッテラン大統領の口から
意外な話が飛び出すのです。