タイトル
「小さいおうち」
プロローグ
昭和11年、田舎から出てきたタキは
赤い三角屋根の、小さくてモダンな屋敷を構える平井家の
お手伝いさんとして、働くことになります。
そこには、主人である雅樹と、美しい年下の妻・時子
二人の間に生まれた、幼い一人息子が暮らしていました。
ある日、平井家に雅樹の会社の仲間たちが集まります。
その中に一人だけ、話の輪に入れない男がいました。
デザイン部員の板倉です。
上司から逃げ出した板倉は、別の部屋で眠ってしまい
客が帰りようやく目覚め、時子と映画や音楽の話で
意気投合します。
穏やかな時子の生活を、見つめていたタキでしたが
その日以降
時子の心が板倉によって、揺れていることに気づくのです。
その後、時は平成になり、タキの親戚である健史は
先日亡くなったタキの、自叙伝ともいえる大学ノートと
宛名のない、未開封の手紙を見つけます。
女中タキが見た、時子の時代が許さなかった恋愛は
そこから紐解かれていくのです。