タイトル
「麦子さんと」
プロローグ
3年前に父を亡くして以来
パチンコ店で働く兄と二人暮らしの麦子のもとに
突如、母の彩子(さいこ)が戻ってきます。
まだ自分が幼い頃に母は家を出たため、麦子は記憶がなく
この突然の出現に、戸惑っていました。
そんな母に言われるまま、一緒に暮らし始めた矢先
兄が出ていき、二人きりになります。
母のやることなすことが、気に障る麦子でしたが
次第に、その存在を意識するようになります。
ところが、ある日
アニオタで声優を目指す麦子が、密かに入学を考えている
声優学校の案内書を、彩子が勝手に見てしまい
麦子は彩子に「母親と思ってない」と
怒りをぶつけてしまいます。
その言葉を最後に、数日後、母は他界。
納骨のために、母の故郷へと向かった麦子は
行く先々で、若い頃の母と重ねられ
故郷で母は、アイドル的存在であった事を知るのです。
町の人たちと、母の青春の続きに付き合っていくうちに
麦子は母がたどった人生を、少しずつ知っていくのです……。